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新春

~卒業生によるブログ~

 

冬が来ると、ふと、物悲しくなることがある。

 

草木は春への期待をし、一時の休息とばかりに色を失って、

道路を彩る街路樹でさえ葉を落として、枯れ木のように眠る季節。

人々の装いも厚着になり、体格すらわからなくなる。

 

冬は隠れの季節だと、私は思う。

 

そのような季節に就職が、仕事が決まる。というのは、うれしいやら悲しいやら、

感情も落ち着かない。

そういったざわめきがあるのも、この季節固有である。

 

私の記憶が正しければ、冬にはいい記憶がない。

 

私が、精神の健康を著しく損なったのは冬であったと記憶する。

以来、この季節を陰鬱に感じる。

夏に比べ早まってやってくる夜闇は、私の生存を許さないようにも考え付き、

空に浮かぶ月の光に、チラチラと目を焼くような感覚を覚える。

闇に紛れて、過去を引き連れてやってくる呪いが、心を削る。

 

だから私は、冬が嫌いである。

 

さて、西風に寄せる歌という詩に『冬来たりなば春遠からじ』という言葉がある。

はて、どのように解釈すべきか。

楽天家の言葉と受け取るべきか、他の意味を見出すべきか。

『冬が来れば、春は必ず来る』と解釈するのは自然すぎるから、

『冬を乗り越えたものだけが春を迎える』と解釈してみようと思う。

 

昔から、長いものに巻かれるということができない人間だった。

 

恥の多い生涯を送ってきました。とは、太宰治の自伝の序文で語られる言葉であるが、

私の生涯を書くならば、反抗の多い生涯であったと思わせるなどとするのが適切である。

 

集団になじまないような性分、というだけではすまない、

トコトン協調性に問題のある人間であった。

 

私には、組織や社会に対しての疑念や指摘がかねてからあった。

群れの生き物であるヒトが作り出した最大規模の群れといえる社会は、

その創立の理念を説けるものがいないというのが、最大の問題点だと指摘もする。

社会運営のために、人類の生産力の大半がそのために費やされるようになって久しく、

 

つまり、

人類は社会を支えるだけの装置になって、生涯を終えているという現状があるのである。

そして、社会の維持のために保守と延命だけを考えるようになる。

社会や群れを成立させた目的を完全に見失っているのに行動をする。

それを座視はできないとするが、どう解決したらいいかもわからず、

一方的にいらだったりもした。

 

人間は、自然に翻弄された時代と、

組織に翻弄される時代とに分けて歴史を語る時代に至った。

という結論に達するまで、時間がかかりすぎてしまった自分がいる。

極端に言えば、組織になじむような人間性ではなかったのである。

 

そのような私だから、到底会社勤めができるなどと考えもしなかった。

そんな私に対して、「会社勤めをできるように訓練いたしますよ」などといわれもすれば、

「それは誠からの言葉か」と疑いたくもなるのが心である。

しかしながら、そういう社会への不適合者を社会的に矯正しますよ、

というのはこちらとしてはうれしいことであった。

 

「ぜひ己で、組織を立ち上げてみせなさいよ」などと聞かされれば、

理念を残したままの純然な組織を目の前で見せられもすれば、

自分自身の見識の狭さや浅学非才を真に理解もできる。

頭では社会や組織へ理屈を言いながら、組織で生きなければならない、

自分自身が人間であることを再認識するに至る。

 

かつての私がなげ捨ててしまった人間と人間の間にはたらく作用を、

再発見するに至れたというだけで意義のあった時間だったとも考えられるし、

それはうれしい限りであった。

それはまるで春の雪解け、凍った様な心の底を、心の奥底に触るようなものであった。

 

無縁仏、というものがあるそうだ。

 

見ず知らず、行倒れて朽ちて死に忘れ去られた人の墓だそうだ。

そこに眠る自分に、誰かがそっと花を手向けてくれたような、

そんなやさしさに触れた気がする。

 

長い冬で凍えてしまったものも多いが、それは記憶しておこうと思う。

そしてまだ、肌に残る冬の痛む感覚が消えてなくなるまで、私にはつらい時間が続くのだ。

 

【支援員からのコメント】

就職決定、おめでとう!

実習に面接練習、履歴書作成、真面目にコツコツ取り組んだ結果だと思います。

君の実力で掴んだ大きな第一歩!

堂々と進んでいってください!

 

さて、建前はこのくらいにして・・・

 

卒業ブログを書いてほしいとは言ったけれど、小説を書いてほしいとは言ってない(笑)

けれどね、こんなにも赤裸々に君の気持ちを知ることができたのは初めてでした。

だからどうしても、ありのままの文章を掲載したいと思いました。

 

じっと静かにパソコンに向かって、一生懸命書いてくれていたよね。

君らしい真実の言葉で、届けたい人たちに気持ちが伝わったら良いなという願いを込めて。

 

11月をもってココ・カラ・フルは卒業ですが、

就職してからもしぶとく君の半歩うしろをついて回りますから。

 

要するに、これからもよろしくね!

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